1.器官系は一つのチームである
体をつくる無数の細胞は、生きるために養分と酸素を必要とし、活動しながら二酸化炭素と不要な物(老廃物)を生み出します。消化系は養分を吸収し、呼吸系は酸素を取り入れて二酸化炭素を出し、循環系はそれらを全身へ運び、排出系は血液中の老廃物をこし取って体の外に出します。
この講義は、体のつくりとしくみを理解するための一般的な説明です。個人の症状や治療についての判断をこの内容で代えることはできませんので、体に異常があれば医療機関に相談してください。
2.消化系と循環系
消化とは、食べ物の中の大きな分子を、体が吸収できる小さな分子に分解する過程です。口でかみ、だ液の中の酵素がデンプンの分解を始め、胃では胃液がタンパク質の分解を始めます。小腸では、すい液や腸液の酵素、そして肝臓でつくられ胆のうにたくわえられた胆汁の助けを借りて消化が仕上がり、養分のほとんどが小腸の内側の壁にある柔毛から吸収されます。大腸ではおもに水が吸収されます。
循環系は、心臓、血管、血液からなります。心臓は2つの心房と2つの心室からなるポンプです。血液が心臓から肺を通って酸素を受け取り、戻ってくる道すじを肺循環、心臓から全身をめぐって細胞に酸素と養分を渡し、戻ってくる道すじを体循環といいます。動脈は心臓から出ていく血液、静脈は心臓に戻ってくる血液が流れる血管で、実際の物質のやりとりはとても細い毛細血管で行われます。
- 1時間:70 × 60 = 4,200回
- 一日(24時間):4,200 × 24 = 100,800回
- 検算:70 × 1,440(一日の分数)= 100,800
3.血液はどれくらいの速さでめぐるのか
大人の体にはおよそ4.5〜5.5 Lの血液があります。心臓が一回収縮するときに左心室が送り出す血液の量を1回拍出量といい、安静にしている大人ではふつう70 mL前後です。これに1分間の心拍数をかけた値が、1分間に心臓が送り出す血液の量(心拍出量)です。
計算してみると、安静時でも全身の血液とほぼ同じ量が、1分ほどごとに心臓を通っていきます。運動をすると心拍数と1回拍出量がともに増えて心拍出量が何倍にもなり、筋肉により多くの酸素を運びます。運動すると心臓がどきどきするのはこのためです。
よくある誤解の一つが「静脈の血は青い」という考えです。酸素を渡したあとの静脈血は、動脈血より暗い赤色なだけで、青くはありません。皮膚の上から静脈が青っぽく見えるのは、光が皮膚や血管を通るときの吸収や散らばり方によって生じる、目の錯覚に近いものです。
- 心拍出量 = 70 mL × 70 = 4,900 mL
- 単位の換算:4,900 mL = 4.9 L(1 L = 1,000 mL)
- かかる時間 = 5 L ÷ 4.9 L/分 ≈ 1.02分
- 検算:4.9 L/分 × 1分 ≈ 5 L なので、約1分です。
4.呼吸系と排出系
息を吸うと、空気は鼻、気管、気管支を通って、肺の中の小さな空気の袋である肺胞に届きます。肺胞は毛細血管に囲まれているので、酸素は血液へ、二酸化炭素は肺胞へと拡散します。肺は自分で動く筋肉をもたず、横隔膜とろっ骨の間の筋肉が胸の空間を広げたり狭めたりすることで、息が出入りします。
排出とは、細胞の活動でできた老廃物を体の外に出すことです。タンパク質が分解されるときにできる窒素を含む老廃物(アンモニア)は、肝臓で比較的毒性の低い尿素に変えられ、じん臓が血液から尿素と余分な水、塩分をこし取って尿をつくります。じん臓は体内の水と塩分の量を調節する役目も担っています。二酸化炭素は肺から、一部の老廃物は汗としても出ていきます。便は消化されずに残ったかすなので、厳密には排出ではなく、別のもの(排便・排せつ)として区別します。
5.神経系と内分泌系 — 体の二つの調節装置
神経系は、脳と脊髄からなる中枢神経系と、全身にのびる末しょう神経系からなります。感覚器官が受け取った刺激は神経を通って電気信号としてすばやく伝わり、中枢神経系が判断して筋肉に命令を送ります。
熱い鍋に手がふれると、考えるより先に手を離します。このような反射は脳を通らずに脊髄からすぐに命令を出すので(脊髄反射)、とても速いのです。くしゃみや瞳孔の反射のように、延髄や中脳が中枢となる反射もあります。熱いという感覚は、そのあとで脳に届きます。
内分泌系は、ホルモンを血液中に分泌して信号を送ります。神経より遅いものの、効果は広く長く続きます。すい臓から出るインスリンは血糖値を下げ、グルカゴンは血糖値を上げます。
よく知られている「舌の味覚地図」、つまり甘味は舌の先、苦味は舌の奥でしか感じないという図は、誤って広まった誤解です。味を感じる味蕾は舌のあちこちに散らばっていて、どの部分もいろいろな味を感じることができます。
6.免疫系 — 体を守る防衛線
皮膚と粘膜、鼻水や胃酸は、病原体が体内に入るのを防ぐ最初の防衛線です。病原体が入りこむと、白血球の一部がそれを取りこんで分解するなど、侵入者の種類を問わない防御がまず起こります。炎症を起こした部分がはれて熱をもつのは、この過程の一部です。
次に、特定の病原体だけを選んで攻撃する防御が起こります。リンパ球が病原体の特徴(抗原)を見分け、それにぴったり合う抗体をつくったり、感染した細胞を取り除いたりします。一度戦った病原体は記憶細胞が覚えているので、ふたたび入ってくると、より速く強く対応します。ワクチンは、病気を起こさないように処理した抗原やその情報をあらかじめ見せて、この記憶をつくらせるしくみです。
かぜの多くはウイルスが原因です。細菌をねらう抗生物質は、ウイルスには効きません。どんな薬が必要かは医療者が判断するので、症状が重かったり長引いたりするときは受診するとよいでしょう。
7.恒常性 — 体の中を一定に
外の気温が氷点下でも30 °Cを超えても、ヒトの体温はおよそ36.5〜37 °Cの範囲から大きく外れません。このように体の外の環境が変わっても、体温、血糖値、体液の濃度といった体内の状態を一定に保とうとする性質を、恒常性(ホメオスタシス)といいます。
恒常性はおもにフィードバックによってはたらきます。暑ければ皮膚の血管が広がり、汗が出て熱を逃がし、寒ければ皮膚の血管が縮み、体がふるえて熱を生み出します。食事のあとに血糖値が上がるとインスリンが分泌されて血糖値を下げ、血糖値が下がるとインスリンの分泌が減ります。温度が上がれば切り、下がれば入れる、給湯器や暖房のサーモスタットに似たしくみです。
| 器官系 | おもな器官 | 中心となる役割 |
|---|---|---|
| 消化系 | 口、胃、小腸、大腸、肝臓、すい臓 | 食べ物の分解と養分の吸収 |
| 循環系 | 心臓、血管、血液 | 酸素・養分・老廃物の運搬 |
| 呼吸系 | 鼻、気管、肺 | 酸素の吸収、二酸化炭素の放出 |
| 排出系 | じん臓、ぼうこう | 老廃物をこし取って尿として出す、水・塩分の調節 |
| 神経系 | 脳、脊髄、神経 | 刺激の伝達とすばやい反応の調節 |
| 免疫系 | 白血球、リンパ節など | 病原体からの防御と記憶 |
📌 要点まとめ
- 器官系は、細胞に養分・酸素を届け、老廃物を片づける一つのチームとしてはたらく
- 養分のほとんどは小腸で吸収され、循環系が肺循環・体循環で全身に運ぶ
- じん臓は血液から尿素と余分な水・塩分をこし取って尿をつくる
- 神経は速く狭い範囲を、ホルモンは遅いが広く長く調節する — 舌の味覚地図は誤解である
- 免疫は一般的な防御と、特定の病原体を記憶する防御に分かれ、ワクチンはその記憶を利用する
- 恒常性とは、フィードバックによって体温・血糖値などを一定に保つ性質である
🤖 AIにはこう聞いてみましょう
コピーして [ ] の部分を自分の状況に書き換えて使います。答えはそのまま信じず、本文と比べて確かめましょう。
器官系がいっしょにはたらく様子を一つの場面で理解したいとき
昼ごはんに食べたご飯ひと口のデンプンが、私の脚の筋肉の細胞のエネルギーになるまでの過程を、消化系・循環系・呼吸系・排出系の順に、物語のように説明してください。各段階で起こることを一行ずつ表にもまとめてください。医学的な助言は入れず、しくみだけを説明してください。
健康情報の中のたとえが正確か確かめたいとき
免疫系を軍隊にたとえて説明してください。そのうえで、このたとえが実際の免疫と違う点を三つ以上指摘してください。最後に、私に何か症状があるとき、こうした一般的な説明だけで判断してはいけない理由も一段落で書いてください。
- 中学・高校の理科教科書の一般的な内容(消化・循環・呼吸・排出、刺激と反応)
- 高校「生物」の一般的な内容(恒常性と体のはたらき、生体防御)
学習目標をすべて達成できたら完了を押しましょう。
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