1.細胞 — 生命の基本単位
すべての生物は一つ以上の細胞でできています。細菌のように一つの細胞が一つの生物である場合もあれば、ヒトのように非常に多くの細胞が集まって組織、器官、器官系をつくる場合もあります。細胞の多くは肉眼では見えないほど小さいので、顕微鏡で観察します。
細胞の中には、それぞれ役割を受けもつ構造(細胞小器官)があります。植物の細胞は、動物の細胞にはない細胞壁、葉緑体、大きな液胞をもっています。植物がしっかり立ち、日光で養分をつくれるのは、このつくりのおかげです。
| つくり | はたらき | 動物 | 植物 |
|---|---|---|---|
| 核 | 遺伝物質(DNA)を収め、細胞の活動を調節する | ある | ある |
| 細胞膜 | 細胞を包み、物質の出入りを調節する | ある | ある |
| ミトコンドリア | 養分を分解して生命活動のエネルギーを得る細胞呼吸 | ある | ある |
| リボソーム | タンパク質を合成する | ある | ある |
| 細胞壁 | 細胞を保護し、形を保つ | ない | ある |
| 葉緑体 | 光のエネルギーで養分をつくる光合成 | ない | ある |
2.DNA、遺伝子、染色体
DNAは遺伝情報をもつ長い分子で、二本の鎖がねじれた二重らせん構造をしています。それぞれの鎖にはA(アデニン)、T(チミン)、G(グアニン)、C(シトシン)の四種類の塩基が並んでいて、向かい合う塩基はAとT、GとCどうしでしか対をつくりません。この塩基の並び順こそが情報です。
遺伝子は、DNAのうち特定のタンパク質(またははたらきをもつRNA)をつくる情報が入っている区間です。染色体は、長いDNAがタンパク質に巻きついてまとまった構造で、細胞が分裂するときに棒状にはっきり見えます。たとえるなら、DNAは文字が書かれた長い糸、遺伝子はその中の一つの段落、染色体は糸を巻いて整理した糸巻きです。
ヒトの体細胞には染色体が46本、つまり23対あります。一対のうち一方は母親から、もう一方は父親から受け継ぎます。このうち22対は男女に共通する常染色体で、1対は性染色体(女性XX、男性XY)です。
- 対をつくる規則:A ↔ T、G ↔ C
- A→T、T→A、G→C、C→G、C→G、A→T
- 検算:二本の鎖を並べると、すべての位置がA-TかG-Cの対になっています。
3.DNAの情報がタンパク質になるまで
DNAは核の中に保管されていて、タンパク質は核の外のリボソームでつくられます。そこでまず、必要な遺伝子の部分をRNAに写し取って核の外へ送り出します。この段階を転写といいます。リボソームはRNAの塩基を三つずつ区切って読みながら(この三つの塩基の組をコドンといいます)、それに対応するアミノ酸を順につなげてタンパク質をつくります。この段階を翻訳といいます。
タンパク質は筋肉や髪の毛をつくる材料でもあり、消化酵素やホルモン、抗体のように、体の化学反応や信号を調節するはたらき手でもあります。遺伝子が形質に影響するのは、ほとんどがこのタンパク質を通してです。
実際の過程はもっと複雑です。どの遺伝子をいつ、どれだけ使うかを調節するしくみがあり、環境や生活習慣も遺伝子の使われ方に影響します。「遺伝子が運命を決める」という表現は、ほとんどの形質について単純化しすぎです。
4.顕性と潜性 — メンデルの遺伝の原理
メンデルはエンドウの交配実験から、形質が一対の遺伝の因子(今日の対立遺伝子)によって伝えられることを明らかにしました。二つの因子のうち一つだけでも形質が現れるものを顕性(優性)、二つともそろわないと現れないものを潜性(劣性)といいます。ふつう顕性は大文字(A)、潜性は小文字(a)で書きます。
顕性は「よりすぐれている」とか「よりありふれている」という意味ではありません。二つの因子がいっしょにあるときに表に現れるほう、という意味にすぎません。また、ヒトの身長、肌の色、目の色のように、ほとんどの形質は複数の遺伝子と環境がいっしょに影響するので、単純な顕性・潜性の法則では説明できません。教科書の例によく使われていた舌を丸められるかどうかも、実際には一対の遺伝子ではきれいに説明できないという指摘があります。
- それぞれの親が子に渡す因子:Rまたはr(それぞれ半分の確率)
- 考えられる組み合わせを表にします:RR、Rr、rR、rr
- 遺伝子型の比:RR : Rr : rr = 1 : 2 : 1
- Rが一つでもあれば丸い形なので、表現型の比:丸い 3 : しわ 1
- 検算:確率で見ると丸いもの3/4、しわのあるもの1/4で、合計は1です。
5.対立遺伝子が三つある場合 — ABO式血液型
メンデルのエンドウの例では対立遺伝子はRとrの二種類だけでしたが、一つの遺伝子に対立遺伝子が三つ以上ある場合もあります。ヒトのABO式血液型が代表例です。対立遺伝子はA、B、Oの三種類で、一人はそのうち二つを両親から一つずつ受け継ぎます。
AとBはOに対して顕性で、AとBがいっしょにあると、どちらも隠されずに両方が現れてAB型になります。そのため遺伝子型AAとAOはA型、BBとBOはB型、ABはAB型で、OOだけがO型です。この場合、血液型(表現型)だけを見ても遺伝子型を一つに決められないという点が大切です。A型の人はAAかもしれないし、AOかもしれません。
ABO式血液型は、一つの遺伝子で比較的きれいに説明できるめずらしい例です。先に見たように、ほとんどの形質はこれほど単純ではありません。また、血液型で性格を判断する話は、科学的な根拠が確認されていない俗説です。
- 父親が渡す対立遺伝子:AまたはO(それぞれ1/2)、母親が渡す対立遺伝子:BまたはO(それぞれ1/2)
- 考えられる組み合わせは4通り:AB、AO、OB(= BO)、OO — それぞれ 1/2 × 1/2 = 1/4
- 表現型に直します:AB → AB型、AO → A型、BO → B型、OO → O型
- 検算:1/4 × 4 = 1 で、すべての場合の確率の合計が1です。
6.細胞分裂 — 体細胞分裂と減数分裂
体が成長し、傷が治るのは体細胞分裂のおかげです。染色体を複製してから二つに分かれ、一つの細胞から遺伝情報が同じ細胞が2個できます。ヒトの場合、分裂の前もあとも染色体は46本です。
生殖細胞(精子と卵)をつくるときには減数分裂が起こります。続けて二回分かれて細胞が4個でき、染色体の数は半分の23本になります。精子(23本)と卵(23本)が受精すると再び46本になり、世代が変わっても染色体の数が保たれます。減数分裂の過程で両親から受け継いだ染色体が混ざって分配されるため、きょうだいでも互いに違う組み合わせの遺伝子をもちます。
| 体細胞分裂 | 減数分裂 | |
|---|---|---|
| 起こる場所 | 体のさまざまな体細胞 | 生殖器官(生殖細胞をつくるとき) |
| 分裂の回数 | 1回 | 続けて2回 |
| できる細胞の数 | 2個 | 4個 |
| 染色体の数 | 46 → 46 | 46 → 23 |
| 役割 | 成長、傷の回復 | 生殖、遺伝的な多様性 |
📌 要点まとめ
- 細胞は生命の基本単位で、植物の細胞には細胞壁・葉緑体がさらにある
- DNAはA-T、G-Cで対をつくる二重らせんで、遺伝子はその中の情報の区間、染色体はDNAがまとまった構造である
- ヒトの体細胞の染色体は46本(23対)— 常染色体22対と性染色体1対
- DNA → RNA(転写)→ タンパク質(翻訳)
- Aa × Aaの表現型の比は3 : 1だが、ヒトの形質のほとんどは複数の遺伝子と環境がいっしょに決める
- 体細胞分裂は46 → 46で2個、減数分裂は46 → 23で4個の細胞をつくる
🤖 AIにはこう聞いてみましょう
コピーして [ ] の部分を自分の状況に書き換えて使います。答えはそのまま信じず、本文と比べて確かめましょう。
DNA・遺伝子・染色体の関係をたとえで理解し、その限界も知りたいとき
DNA、遺伝子、染色体、タンパク質の関係を、本やレシピのような身近なたとえで説明してください。そのうえで、そのたとえが実際の生物学と合わない点(遺伝子発現の調節、環境の影響など)を別にリストにまとめてください。
遺伝の問題を練習したいとき
顕性・潜性の一対の対立遺伝子で解く交配の問題を3問出してください。私が遺伝子型と表現型の比を答えたら、考えられる組み合わせの表をかいて採点してください。最後に、実際のヒトの形質のほとんどがこれほど単純ではない理由を、二、三文で説明してください。
- 中学・高校の理科教科書の一般的な内容(細胞、遺伝)
- 高校「生物」の一般的な内容(遺伝子の発現)
学習目標をすべて達成できたら完了を押しましょう。
このブラウザでは保存できないため、この画面でのみ表示されます。