1.役割:誰の目で見るかを決める
「あなたは小学校の理科の先生です」のように役割を決めると、説明の観点、口調、レベルがその役割に合わせて変わります。同じ「光合成」でも、先生ならたとえと問いかけで、植物学者なら化学反応式で、農家なら作物の育て方と結びつけて説明するでしょう。役割は、モデルにどんな種類の文章を書き続けるかを伝える強力な文脈です。
ただし、役割を与えたからといって、モデルがその分野の専門家になるわけではありません。「あなたは弁護士です」と言っても、モデルが知らない法律の知識が生まれるわけではないのです。役割は口調と観点を変えるだけで、事実の正確さは保証しないことを覚えておく必要があります。
役割は批判役として使うときにも役立ちます。「あなたはこの企画書を初めて見る厳しい審査員です。弱点を五つ見つけてください」と頼めば、自分が見落としていた穴を前もって知ることができます。
2.例:言葉で説明しにくければ見せる
望む結果を言葉で説明しにくいときは、例を一つか二つ見せるのがいちばん早い方法です。人も「こんな感じで」という見本を見れば一度で理解できるように、モデルも例の長さ、口調、構造をそのまま真似します。例を与えない場合をゼロショット、一つ与える場合をワンショット、いくつも与える場合をフューショットと呼ぶこともあります。
例を与えるときは二つのことに注意します。第一に、モデルは例をとても忠実に真似するので、三つの例がすべて「〜すること」の形で終わっていれば、結果もすべてそう終わります。多様な結果がほしいなら、例も多様にします。第二に、例の内容まで写さないように、「形式だけを参考にし、内容は新しく」とはっきり伝えておきます。
- まず指示を書きます:各レビューを肯定・否定・中立のいずれかに分類し、理由を一行で書いてください。
- 形式を示す例を二つ入れます。例1 — レビュー:「配送は早かったけれど、サイズが思ったより小さいです」 → 中立 / 理由:長所と短所が両方ある。
- 例2 — レビュー:「二回目の購入です。やっぱりいいです」 → 肯定 / 理由:再購入と満足の表現。
- 最後に分類するレビューを貼り付け、「上の例と同じ形式で」と付け加えます。
3.段階:大きな仕事は分けて任せる
「市場調査の報告書を書いて」のような大きな仕事を一度にさせると、結果が浅くなりがちです。人が仕事をする順番どおりに分けて任せれば、ずっとよくなります。まず目次をもらい、目次を自分で直し、章ごとに内容を書かせ、最後に全体を整えさせる、といったやり方です。各段階で自分が確認し、方向を決められるのが最大の長所です。
計算や推論が必要な質問では、「答えだけでなく、解き方の過程を段階ごとに見せてください」と頼むのも役に立ちます。第4講で見たように、モデルは一トークンずつ文章を書くので、途中の過程を文章で書き出させると、その過程が次の段階の根拠になります。何より、人が各段階を検算できるようになります。段階がもっともらしく見えても途中に間違った計算が混ざることがあるので、数字は自分で確かめます。
- 段階1:目次や計画を先にもらう
- 段階2:自分で計画を直す(削る、足す、順番を変える)
- 段階3:部分ごとに内容をつくる
- 段階4:全体をまとめて見直し、整えさせる
- 段階5:事実と数字は人が確認する
4.形式:結果の形を固定する
結果をほかの場所に移して使うつもりなら、形式を正確に決めておくとよいでしょう。「表で」とだけ言わずに列の名前と順番まで決めれば、何度頼んでも同じ形の結果が出て比べやすくなります。表計算ソフトに移すなら「カンマ区切りの形式(CSV)で」、文書に貼るなら「見出し・小見出し・本文の構造で」のように、使う場所に合わせます。
形式の指定には、長さと個数も含まれます。「長所三つ、短所三つ、それぞれ一文で」のように個数を決めれば、一方だけを長々と並べるのを防げます。また、「わからなければわからないと書いて」「確かでない項目には(要確認)を付けて」のように不確かさを示すルールを形式に入れておけば、第7講で扱う検証が楽になります。
- 誤り: ノートパソコン三台を比べて。正しい: ノートパソコンA、B、Cを表で比べてください。列は「重さ、画面サイズ、バッテリー持続時間、価格帯、要確認かどうか」の順にし、確かでない値は空欄にして、最後の列に「要確認」と書いてください。列の名前・順番と、不確かさを示すルールまで決めれば、結果をそのまま見直し、移して使えます。
5.四つのテクニックを組み合わせる
実際の場面では、テクニックを組み合わせて使います。たとえば英語のメールの下書きをもらうなら、「あなたはビジネス英語に詳しい同僚です(役割)。以下の例のメールの口調を参考にしてください(例)。まず要点を三行にまとめて見せ、私が確認したらメールを書いてください(段階)。件名、本文、結びの順で、本文は120語以内で(形式)」のようになります。
プロンプトが長くなったら、資料と指示を混ぜずに区画を分けます。「### 指示」「### 資料」「### 例」のように見出しを付けたり、引用符で資料を囲んだりすれば、モデルは何が命令で何が処理する内容なのかを取り違えません。この習慣は、資料の中に紛れ込んだおかしな指示文に従ってしまう失敗を減らすのにも役立ちます。
6.結果が期待と違うとき:抜けているテクニックを探す
前のヒントのとおり、テクニックは最初から全部入れるより、結果を見て一つずつ足していくほうがよいでしょう。そのためには、結果の「症状」を見て、どのテクニックが抜けているかを見当づけられる必要があります。下の表は、よく見られる症状と、それに合った処方をまとめたものです。
処方は一度に一つずつ変えてみるのがコツです。いくつも同時に変えると、結果がよくなっても何が効いたのかがわからず、次に似た仕事をするときに使える教訓が残りません。効果のあった処方は、第5講のヒントのようにプロンプトのひな形に書き留めておきます。
| 結果の症状 | 抜けている可能性が高いもの | こう直す |
|---|---|---|
| 説明が難しすぎる、またはやさしすぎる | 役割・読む人 | 「中学生に説明する理科の先生として」のように、観点とレベルを決める |
| 口調や長さが望むものと違う | 例 | 望む結果の短い例を一つ見せ、「この形式だけを参考にして」と付け加える |
| 内容が浅く、大事な部分が抜ける | 段階 | 目次や計画を先にもらい、自分で直したあとで部分ごとに書かせる |
| 毎回形が違い、比べたり移したりしにくい | 形式 | 列の名前・順番・個数・長さを決める |
| 資料の中の文を指示と取り違える | 区画分け | 指示と資料の間に、見出しや引用符で境目を置く |
- 症状1「毎回長さが違う」は形式の問題です:「決定事項は三行以内」と長さを決めます。
- 症状2「担当者が抜ける」も形式の問題です:「やることは表で、列はやること・担当者・締め切り」を加えます。
- もう一度もらってみて、議事録に担当者が書かれていない項目は「(要確認)」と示させます。
📌 要点まとめ
- 役割は観点・口調・レベルを変えるが、知識を増やしてはくれない
- 言葉で説明しにくい結果は例で見せる — モデルは例を忠実に真似する
- 大きな仕事は、計画 → 見直し → 部分ごとの作成 → 仕上げの段階に分けて任せる
- 形式は、列の名前・順番・個数・長さ・不確かさの表示まで具体的に決める
- 長いプロンプトは、指示・資料・例の区画を分けて書く
🤖 AIにはこう聞いてみましょう
コピーして [ ] の部分を自分の状況に書き換えて使います。答えはそのまま信じず、本文と比べて確かめましょう。
自分の企画書や文章の弱点を前もって見つけたいとき
あなたはこの文書を初めて見る厳しい審査員です。以下の文書の弱点を重要な順に五つ見つけ、それぞれどう補えばよいかを一行ずつ提案してください。ほめ言葉は不要です。 ### 文書 [文書を貼り付け]
同じ形式の結果を何度も受け取る必要があるとき
### 指示 以下の資料の各項目を表にまとめてください。列は「項目、要点(20字以内)、日付、要確認」の順にしてください。資料にない値は空欄にし、「要確認」の列に印を付けてください。 ### 例 | 会議 | 来四半期の予算についての議論 | 3月5日 | | ### 資料 [資料を貼り付け]
大きな作業を段階的に進めたいとき
[テーマ]についての報告書を一緒に書きたいと思っています。今日は目次だけをつくってください。章ごとに、扱う中心的な問いを一行ずつ添えてください。私が目次を直して送ったら、そのときに第1章から書いてください。
- 生成AI活用ガイドの多くに共通して載っている、プロンプトのテクニック(役割・例・段階・形式)の一般的な内容
学習目標をすべて達成できたら完了を押しましょう。
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